✓ 雇われない働き方に興味がある
✓ フリーランスの働き方や年収を知りたい
✓ 正社員を辞めて後悔しないか不安
「このまま病院や施設で働き続けて、いいのかな…」
給料はなかなか上がらない。
SNSを開くと、フリーランスで自由に働く理学療法士が目に入る。
そんなとき、自分も雇われずに働けないかと考えるのは自然なことです。
ただ、正社員を辞めると、給与明細には出てこないお金も一緒になくなります。
・理学療法士15年目/訪問リハビリ8年目の現役PT
・リハ職のお金と転職に特化したブログ「お金のリハビリテーション室」運営
・副業でWebライター。開業届を出して青色申告
・正社員を辞めてフリーランスになることも考えたが、本業を残す形を選択
この記事では、理学療法士のフリーランスの働き方と年収、そして辞めると減るお金を数字で整理します。
✓ 保険のリハビリは医師の指示が必要で、PTだけでは開業できない
✓ 正社員を辞めると、会社が払っていた社会保険料・有給・賞与・退職金がなくなる
✓ 月給30万円の人なら、売上約495万円でやっと会社員と同じ水準
✓ 業務委託の仕事は契約の中身と保険を自分で確認
✓ いきなり辞めずに、本業を残したまま個人事業を足すのが現実的
理学療法士のフリーランスとは
フリーランスとは、病院や施設に雇われずに、業務委託の契約や自分の事業で収入を得る働き方です。
給料ではなく「報酬」や「売上」を受け取り、税金や保険の手続きも自分で行います。
保険のリハビリは医師の指示がないとできない
先に押さえておきたいのが、理学療法士には開業権がないことです。
理学療法士及び作業療法士法では、理学療法は医師の指示のもとで行うものとされています。医療保険や介護保険を使うリハビリを、理学療法士が1人で開業して提供することはできません。
そのため、フリーランスの理学療法士の仕事は、次のどちらかになります。
- 病院・施設・事業所と契約して、そこでリハビリを行う
- 保険を使わない自費のサービスや、医療以外の仕事をする
※出典:理学療法士及び作業療法士法第2条・第15条。身体に障害のない人への介護予防の指導など、診療の補助に当たらない範囲では医師の指示は不要とされています(厚生労働省 平成25年11月27日 医政医発1127第3号)。
理学療法士のフリーランスの働き方
フリーランスの理学療法士の働き方は、大きく4つに分けられます。
| 働き方 | 中身 | 注意点 |
|---|---|---|
| 業務委託・個人契約 | クリニック・デイ・訪問・ジムなどと契約してリハビリや運動指導を行う | 契約の中身が雇用と変わらないことがある |
| 自費リハビリ・整体 | 保険を使わないサービスを自分で提供する | 集客と開業資金が必要 |
| トレーナー・講師 | パーソナルトレーニング・セミナー・研修の講師 | 実績と発信力が収入を左右する |
| 医療以外の仕事 | Webライター・監修・動画・デザインなど | 最初は単価が低い |
上の2つは理学療法士の資格をそのまま使う仕事、下の2つは経験や知識を別の形で売る仕事です。
自費リハビリや整体の開業は、準備することが多いので別の記事でまとめます。
掛け持ちのパートはフリーランスではない
ここで間違えやすいのが、非常勤やパートの掛け持ちです。
私もデイと訪問を掛け持ちしていましたが、どちらも雇用の契約でした。デイは時給、訪問は件数で給料が決まる形です。
雇われて働く掛け持ちは、働く場所が増えただけで、フリーランスではありません。
ただ、雇用で守られたまま収入の柱を増やせるので、フリーランスの前に試す働き方としてはいちばん手堅い方法です。
掛け持ちや在宅ワークの始め方は、こちらで詳しく解説しています▼
理学療法士がフリーランスになると減るお金
フリーランスの記事では「収入が不安定になる」とよく書かれます。
ただ、不安定になる以前に、正社員なら会社が出してくれていたお金がなくなることは、あまり知られていません。
会社が払っていた社会保険料
健康保険料と厚生年金保険料は、正社員なら会社と本人で半分ずつ払っています。
給与明細に出てくるのは本人の分だけですが、実際には同じ額を会社も払っています。
| 会社が払っている分 | 月給30万円 | 賞与74万円 |
|---|---|---|
| 健康保険料(9.85%の半分) | 1万4,775円 | 3万6,445円 |
| 厚生年金保険料(18.3%の半分) | 2万7,450円 | 6万7,710円 |
| 合計 | 4万2,225円(年50万6,700円) | 10万4,155円 |
月給30万円・賞与年74万円の人なら、会社が年に約61万円を、本人の代わりに払っている計算です。
※月給30万円・賞与74万円は、理学療法士等の30〜34歳の平均(きまって支給する現金給与額30万7,600円・年間賞与74万4,900円)に近い数字で置いた例です。出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」/協会けんぽ「令和8年度 都道府県毎の保険料率」/日本年金機構「保険料額表」
フリーランスになると、国民健康保険と国民年金に切り替わり、保険料は全額自分で払います。国民年金の保険料は、令和8年度で月1万7,920円です。
しかも将来受け取れるのは基礎年金だけで、厚生年金の上乗せはなくなります。手取りから引かれるお金の仕組みはこちらでまとめています▼
有給・賞与・退職金
正社員のときは当たり前だったものも、フリーランスにはありません。
フリーランスになるとなくなるもの
- 有給休暇:医療,福祉の平均は年12.1日の取得。フリーランスは休んだ日の報酬がゼロ
- 賞与:理学療法士等の30〜34歳で年74万4,900円の平均
- 退職金:退職給付の制度がある企業は74.9%。フリーランスは自分で積み立てるしかない
- 傷病手当金:病気やけがで働けないときの給付。国民健康保険では多くの市町村で実施なし
出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」/厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」/国民健康保険法第58条第2項
とくに見落としやすいのが、最後の傷病手当金です。
会社員の健康保険なら、病気で長く休んでも給料のおよそ3分の2が支給されます。国民健康保険では市町村の任意の給付なので、フリーランスが体を壊すと、その月の収入はそのまま止まります。
理学療法士の退職金の仕組みはこちら▼
正社員と同じ水準に必要な売上
ここまでを足すと、フリーランスで「正社員と同じくらい」を目指すときの目安が見えてきます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 正社員の額面年収(月給30万円×12+賞与74万円) | 434万円 |
| 会社が払っていた社会保険料 | 約61万円 |
| フリーランスで必要な売上 | 約495万円 |
これは最低ラインです。
実際には、ここに交通費や保険料などの経費、休む日の分、退職金の代わりの積み立てが上乗せされます。額面が同じくらい稼げても、正社員と同じ暮らしにはならないということです。
理学療法士のフリーランスの年収
フリーランスの理学療法士の年収は、人によって大きく違います。
目安になるのは、正社員と同じ暮らしを保つのに必要な売上です。
| 比べるもの | 年間の金額 |
|---|---|
| 正社員の額面年収(月給30万円・賞与74万円の例) | 434万円 |
| フリーランスで同じ水準に必要な売上 | 約495万円〜 |
フリーランスの年収が500万円と聞くと高く感じますが、正社員の434万円とほとんど変わらない暮らしということです。
業務委託の報酬は、1件いくら・1時間いくらで決まることが多く、時間あたりで見ると正社員の時給より高く見えます。
ただし、単価だけで比べるのは危険です。
単価を見るときに確かめること
- 移動の時間と交通費は報酬に入っているか
- 記録や会議の時間に報酬は出るか
- 利用者のキャンセルが出た日の報酬はどうなるか
- 月に何件・何時間の仕事が続く見込みか
とくに4つ目が大事です。
個人で仕事を受けてみると、案件が続かなかったり、急になくなったりします。雇われているアルバイトでは考えられないことでした。
年収は「単価×続いた件数」で決まります。単価が高くても、仕事が毎月続くかどうかで手元に残る額はまったく変わります。
※フリーランスの理学療法士に限った年収の公的統計はありません。
業務委託の仕事で確認すること
フリーランスの理学療法士が最初に受けやすいのが、業務委託の仕事です。
ただ、「業務委託」と書かれていても、中身は職場によってまちまちです。
雇用と業務委託の違い
雇用か業務委託かは、契約書の名前ではなく働き方の実態で判断されます。
| 雇用 | 業務委託 | |
|---|---|---|
| 仕事の指示 | 職場の指示に従う | やり方は自分で決める |
| 仕事を断る自由 | 原則なし | あり |
| 勤務時間・場所 | 職場が決める | 契約の範囲で自分で決める |
| 社会保険・有給 | あり | なし(自分で用意) |
注意したいのは、働き方は雇用と同じなのに、契約だけが業務委託になっているケースです。
シフトも担当も職場が決めるのに、社会保険も有給もない。これでは、フリーランスの自由は手に入らず、正社員の保障だけを手放すことになります。
私がいた老健と訪問の職場には、業務委託で働くPTはいませんでした。求人で見かけたら、中身をよく確かめてから決めてください。
契約書で見るところ
業務委託の契約書で確認すること
- 報酬の額と、何に対して払われるか(1件・1時間・1日)
- 支払いの時期
- キャンセルや契約の打ち切りのルール
- 交通費・駐車場代などの経費はどちらが持つか
- 事故が起きたときの責任と保険
3つ目のキャンセルは、とくに大事です。
私も個人で受けた仕事で、急なキャンセルにあったことがあります。始める前にルールを決めておけば、慌てずにすみます。
賠償責任保険は自分で入る
雇われているときは、リハビリ中の事故は職場の保険で対応することがほとんどです。フリーランスになると、自分で保険を用意する必要があります。
ここで気をつけたいのは、どの保険でも理学療法士の業務が補償されるわけではないことです。
たとえば、フリーランス協会の会員向けの賠償責任補償は、FAQで理学療法士の業務は補償の対象外という前提で回答されています。一方で、日本理学療法士協会の会員向けの賠償責任保険は、理学療法士としての業務が対象です。
加入する前に、業務委託や自費の仕事が補償の範囲に入るかを確かめておきます。
※出典:フリーランス協会「FAQ」/神奈川県理学療法士会「理学療法士賠償責任保険のご案内」。補償の範囲は、各保険の約款で確認してください。
フリーランス保護法で守られること
2024年11月から、フリーランスを守るための法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が始まっています。
発注する側に求められること
- 仕事の内容・報酬・支払日などを、書面やメールで示す
- 報酬は、仕事を受け取ってから原則60日以内に払う
- 1か月以上の仕事では、一方的な報酬の減額や受け取りの拒否は禁止
口約束で始まった仕事でも、条件は書面やメールで残してもらうように頼めます。条件を文字で残すことが、フリーランスの身を守るいちばんの方法です。
フリーランスで失敗しやすいこと
フリーランスの理学療法士がつまずくのは、技術よりもお金と仕事の流れのところです。
失敗しやすい3つのパターン
- 収入の柱が1つしかない:契約先が1か所だと、打ち切られた瞬間に収入がゼロ
- 生活費の貯金がないまま辞める:仕事が途切れた月に、焦って条件の悪い仕事を受けてしまう
- 体を壊したときの備えがない:傷病手当金がないので、休んだぶんだけ収入が止まる
どれも、辞める前に準備しておけば防げることです。
契約先を2〜3か所に増やす、数か月分の生活費を貯めておく、働けないときの保険を考えておく。この3つを済ませてから動くだけで、失敗の多くは避けられます。
いきなり辞めずに本業を残す働き方
正直に言うと…
私も正社員を辞めて、フリーランスになろうと考えたことがあります。
でも、個人で受ける仕事は案件が続かず、急なキャンセルにあったこともありました。この状態で本業を辞めるのは、きつすぎると感じたのです。
今も正社員を続けているいちばんの理由は、生活の安定です。土台があるから、副業で新しいことに挑戦できています。
フリーランスか正社員か、の二択で考える必要はありません。その間には、次のような働き方があります。
正社員のまま副業で個人事業主になる
正社員を続けたまま、副業で開業届を出すことができます。
私もWebライターを始めたときに開業届を出し、確定申告は青色申告にしています。本業の給料と社会保険はそのままで、フリーランスと同じように自分で仕事を受ける経験が積めます。
副業を始めるときは、職場の就業規則を確認しておきます。
私は副業の許可を、上司に正直に報告してとりました。先に話しておくと、あとで気まずくなる心配がありません。
時短・非常勤にして業務委託を足す
副業で手応えが出てきたら、本業を時短や非常勤に切り替えて、空いた時間に業務委託や自分の仕事を入れる方法があります。
勤務時間や日数によっては、非常勤でも勤め先の社会保険に入れます。保障を少し残しながら、自由に使える時間を増やせるのがこの形のよいところです。
本業の年収を先に上げておく
本業の年収が上がると、副業で必要な額が下がり、生活費の貯金も早く貯まります。
フリーランスを考えるなら、先に本業の土台を固めておくほうが、結果的に近道になります。本業と副業の組み合わせ方は、こちらで解説しています▼
本業を残すなら職場選びから
本業を残す働き方は、今の職場が副業や時短に向いているかどうかで、できることが大きく変わります。
本業を残すなら確かめたい職場の条件
- 就業規則で副業が認められているか
- 時短勤務や非常勤への切り替えができるか
- 残業が少なく、副業の時間が取れるか
- 本業の給与と社会保険で、生活の土台が作れるか
今の職場でどれも難しいなら、フリーランスより先に、副業や時短ができる職場へ移るほうが現実的です。
ただ、副業の可否や時短の実績は、求人票に書かれていないことがほとんどです。PTOT人材バンクのようなリハ職専門のエージェントなら、求人票に出ていない働き方の条件を、代わりに職場へ確かめてもらえます。
PTOT人材バンクの評判や、連絡を止める方法はこちらで検証しています▼
理学療法士のフリーランスでよくある質問
事業を始めたら、開業から1か月以内に税務署へ開業届を出すことになっています。青色申告にしたい場合は、原則としてその年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業から2か月以内)に承認申請書も出します。正社員のまま副業で出すこともでき、私もWebライターを始めたときに提出しました。
決まりはありません。ただ、業務委託の仕事は「すぐに1人で任せられる人」を求めることが多く、経験が浅いと仕事を受けにくくなります。まずは本業で経験を積みながら、副業で小さく始めるのが安心です。
まずは就業規則で、禁止なのか、届け出をすれば認められるのかを確認します。厚生労働省は副業を認める方向でガイドラインを示していますが、最終的なルールは職場ごとです。どうしても認められない場合は、副業ができる職場へ移ることも選択肢になります。
人によって違いますが、仕事が途切れても慌てずにすむ額が目安です。フリーランスは病気で休んでも傷病手当金がなく、報酬の入金も働いた月より後になります。数か月は売上がなくても暮らせる生活費を貯めてから動くと、条件の悪い仕事を受けずにすみます。
まとめ|理学療法士のフリーランスは本業を残して始める
✓ 保険のリハビリは医師の指示が必要。PTだけでは開業できない
✓ 掛け持ちのパートはフリーランスではなく、雇用のまま収入を増やす方法
✓ 辞めると、会社負担の社会保険料・有給・賞与・退職金・傷病手当金がなくなる
✓ 月給30万円なら、売上約495万円でやっと会社員と同じ水準
✓ 業務委託は契約の中身・キャンセルのルール・保険を確認
✓ 本業を残したまま副業で個人事業主になるのが現実的
フリーランスは、うまくいけば自由な時間と収入の両方が手に入る働き方です。
ただ、そこにたどり着くまでの途切れる月を乗り切れるかどうかで、結果が分かれます。
フリーランスを目指すなら、生活費は貯めておいたほうがいいです。お金の余裕があれば、仕事も落ち着いて選べます。
まずは本業を残したまま、副業で小さく始めてみてください。
理学療法士の副業の種類と始め方はこちら▼
参考文献・出典一覧
- 理学療法士及び作業療法士法(第2条 定義/第15条 診療の補助)
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(理学療法士等の年齢別の給与と賞与)
- 協会けんぽ「令和8年度 都道府県毎の保険料率」
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表」
- 日本年金機構「国民年金保険料」(令和8年度 月額1万7,920円)
- 国民健康保険法(第58条第2項 傷病手当金は任意給付)
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(産業別の有給取得日数)
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」(退職給付制度がある企業の割合)
- 厚生労働省「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭和60年 労働基準法研究会報告)
- 中小企業庁「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(令和6年11月1日施行)
- フリーランス協会「FAQ」(理学療法士の業務と賠償責任補償)
- 神奈川県理学療法士会「理学療法士賠償責任保険のご案内」
- 国税庁「No.2090 青色申告制度」(青色申告の承認申請の期限)
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