✓ 自分の昇給額が普通なのか知りたい
✓ 理学療法士が昇給しない理由を知りたい
✓ 給料を上げる現実的な方法を知りたい
4月の明細を見て、去年とほとんど変わっていない。そんな経験はありませんか。
公的データで計算すると、理学療法士の昇給は30年働いて月10万円ほどです。年に直すと約3,270円。全産業の平均と比べて、3分の2のペースしかありません。
・理学療法士15年目/訪問リハビリ8年目の現役PT
・リハ職のお金と転職に特化したブログ「お金のリハビリテーション室」運営
・老健7年の昇給は合計14,000円。3年目に「上がらない」と気づく
・転職と副業の両方を経験し、年収450万円から500万円へ
この記事では、昇給額の実態と、報酬が上がっているのに給与が上がらない理由、そして私が実際にやった対策をお伝えします。
✓ 昇給は年平均約3,270円。全産業の3分の2のペース
✓ 45歳を過ぎると、ほぼ止まる
✓ 報酬は下がっていない。むしろ令和8年度は約30年ぶりの大幅プラス改定
✓ 上がった報酬が給与に回るかは、勤務先の判断しだい
✓ 待っていても変わらない。転職・副業・開業のどれかで動く
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理学療法士の昇給額はいくらか
まず実際の数字から見ていきます。
厚生労働省の統計で、理学療法士など(PT・OT・ST・視能訓練士)の月給を全産業の平均と並べたものが次の表です。
| 年齢 | 理学療法士など | 全産業の平均 | 差 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 25万1,800円 | 23万2,500円 | +1万9,300円 |
| 25〜29歳 | 26万5,600円 | 26万7,200円 | −1,600円 |
| 30〜34歳 | 29万5,200円 | 29万9,500円 | −4,300円 |
| 35〜39歳 | 30万8,000円 | 32万8,700円 | −2万700円 |
| 40〜44歳 | 32万7,800円 | 35万1,400円 | −2万3,600円 |
| 45〜49歳 | 34万8,500円 | 37万2,700円 | −2万4,200円 |
| 50〜54歳 | 35万円 | 38万400円 | −3万400円 |
20代前半は、理学療法士のほうが1万9,300円も高いです。資格職なので当然ともいえます。
ところが20代後半で追い抜かれ、そのあとは差が開き続けます。50代前半では月3万円の差です。
30年で月10万円しか増えない
同じ表を「増え方」で見ると、差はもっとはっきりします。
20〜24歳から50〜54歳までの30年で増えた額
- 理学療法士など:9万8,200円(年平均 約3,270円)
- 全産業の平均:14万7,900円(年平均 約4,930円)
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の所定内給与額から算出
理学療法士の昇給ペースは、全産業のおよそ3分の2です。
私が新卒で入った老健は、7年勤めて昇給の合計が14,000円でした。年2,000円です。統計の平均よりさらに低かったことになります。
45歳を過ぎると止まる
もうひとつ押さえておきたいのが、伸びが止まる時期です。
45〜49歳から50〜54歳までの5年で増えた額
- 理学療法士など:1,500円(年平均 約300円)
- 全産業の平均:7,700円(年平均 約1,540円)
45歳を過ぎると、理学療法士の月給はほぼ横ばいになります。役職につかないかぎり、ここから大きく変わることはありません。
※55〜59歳では42万400円まで上がりますが、この年代の集計対象は527人と少なく、数字が動きやすい点に注意してください。管理職層が多く含まれている可能性があります。
給料の相場そのものと、低いときの対策はこちらにまとめています▼
報酬は上がっているのに昇給しない理由
「診療報酬が下がり続けているから給料が上がらない」と説明されることがあります。
これは事実と違います。
診療報酬も介護報酬もプラス改定が続いている
直近2回の改定を並べると、どちらもプラスです。
| 改定 | 改定率 |
|---|---|
| 令和6年度 診療報酬(本体) | +0.88% |
| 令和6年度 介護報酬 | +1.59% |
| 令和8年度 診療報酬(本体) | +3.09% |
とくに令和8年度は約30年ぶりの高い改定率です。しかも、その中身に注目してください。
賃上げ分の+1.70%について、国の資料にはこう書かれています。令和8年度・令和9年度にそれぞれ3.2%のベースアップを実現するための措置である、と。
そして理学療法士は、この賃上げの対象職種に含まれています。ベースアップ評価料の対象は「医師・歯科医師を除く医療関係職種」で、理学療法士も明記されています。
介護分野でも動きがあります。2026年6月から、訪問リハビリテーションが処遇改善加算の対象に加わりました(加算率1.5%)。
※出典:第253回 社会保障審議会介護給付費分科会 資料1。
つまり問題は「報酬が下がっていること」ではありません。上がった分が、自分の給与に回ってくるかどうかです。
加算が給与に回るかは勤務先しだい
ここが最大のポイントです。
介護職員等処遇改善加算は、介護職員への配分が基本とされています。リハビリ職に配分するかどうかは、事業所の裁量です。
同じ加算を取っている2つの事業所でも、片方はPTに配分し、もう片方は介護職員だけに配分する。これが制度上は両方とも認められています。
※出典:厚生労働省「介護職員の処遇改善」。配分対象には理学療法士を含む介護職員以外の職種も含まれますが、介護職員への配分を基本としたうえで、事業所内での柔軟な配分が認められています。
報酬が上がったというニュースを見ても、自分の明細が変わらないのはこのためです。まず自分の職場がどう配分しているか、確認してみてください。
理学療法士が増え続けている
構造的な理由の1つ目は、人数です。
2026年の第61回国家試験では、11,156人が合格しました(受験者12,436人・合格率89.7%)。この水準が毎年続いています。
※出典:厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」。累計の合格者数は日本理学療法士協会の統計情報で公開されています。
毎年1万人以上が新しく資格を取る状況では、給料を上げなくても人が集まります。職場側に賃上げの動機が生まれにくい構造です。
経験年数が単価に反映されない
2つ目は、報酬のしくみです。
疾患別リハビリテーション料は、施設基準と疾患の種類で点数が決まります。担当するセラピストの経験年数や保有資格では変わりません。
✓ Aさん20年目:勉強会や学会に100万円以上を投じてきた
✓ Bさん15年目:研鑽にはあまり関心がない
✓ Cさん1年目:入職したばかりの新人
この3人が同じ患者に同じ単位数のリハビリを行った場合、病院に入る報酬はまったく同じです。
認定理学療法士や専門理学療法士、各種の手技系資格を取っても、それ自体で診療報酬が増えることはありません。努力が収入に直結しにくい構造になっています。
ただし、資格が評価される職場がないわけではありません。資格手当として独自に支給している事業所はあります。これは制度ではなく、勤務先の方針の問題です。
算定できない業務が増えている
3つ目は、業務量です。
理学療法士の仕事は、リハビリの実施だけではありません。
単位として算定できない主な業務
- リハビリテーション実施計画書の作成
- 新人教育(プリセプター)
- 学生指導(スーパーバイザー)
- 院内勉強会と資料づくり
- 学会発表・研修参加
- サービス担当者会議
- 委員会活動
- リハビリに含まれない移乗介助・おむつ交換
これらが増えるほど、働いている時間あたりの収益は下がります。結果として、給与に回せる原資も増えません。
昇給する職場かどうかを見分ける方法
同じ理学療法士でも、勤務先によって昇給額は変わります。確認すべきは4つです。
✓ 就業規則に書かれた昇給額と昇給の基準
✓ 基本給と手当の比率
✓ 賞与の月数と算定の基準
✓ ベースアップ評価料・処遇改善加算の配分方針
就業規則で昇給額を確認する
求人票の「昇給あり」は、金額を約束するものではありません。
就業規則や賃金規程には、昇給の時期と基準が書かれています。在職中なら閲覧できますし、面接の場で確認しても失礼にはあたりません。
基本給の比率を見る
昇給は基本給に対して行われることが多く、基本給が低い職場は昇給額も小さくなります。
賞与や退職金も基本給をもとに計算されるのが一般的です。月給の総額が同じでも、基本給18万円+手当8万円の職場と、基本給24万円+手当2万円の職場では、数年後の差が大きくなります。
加算の配分方針を聞く
先ほど説明したとおり、加算をリハビリ職に配分するかは事業所の判断です。
「ベースアップ評価料は取得していますか」「処遇改善加算はリハ職にも配分されますか」と聞くだけで、職場の姿勢がわかります。
答えをはぐらかされる職場は、ほかの条件も不透明なことが多いです。見分け方はこちらにまとめています▼
昇給しないときの対策3つ
ここからは具体的な対策です。どれも私自身が実際にやったことをもとにお伝えします。
対策①転職で上げる
もっとも確実で、もっとも早いのが転職です。
年3,270円の昇給を10年続けても、増えるのは月3万円ほどです。職場を変えれば、その差が1回でつくことがあります。
私は老健から訪問リハビリに移って、年収が450万円から500万円になりました。老健で7年かけた昇給が14,000円だったことを考えると、違いは明らかです。
訪問リハビリの給与が高い理由はこちらで解説しています▼
紹介で動く場合
理学療法士の世界は狭く、同僚や先輩から声がかかることがあります。
すでに信頼関係があるぶん職場に馴染みやすいのが利点です。一方で、話が来るタイミングを選べないのが弱点になります。
私は転職も副業の非常勤も、どちらも紹介がきっかけでした。ただ、待っているだけでは来ません。普段から周囲に話しておくことが大事です。
転職エージェントを使う場合
紹介のあてがないなら、PT専門のエージェントを使うのが現実的です。
✓ 一般には出ていない非公開求人の紹介
✓ 給与交渉の代行
✓ 残業・離職率・人間関係などの内部情報
とくに価値があるのが給与交渉の代行です。自分では聞きにくい基本給の内訳や加算の配分も、担当者を通せば確認してもらえます。
どの会社も登録と利用は無料です。複数に登録して、提示される求人を比べるのが確実です。
各社の違いはこちらで比較しています▼
対策②副業で増やす
2つ目は副業です。本業の昇給を待つより、収入の柱をもう1本持つほうが早いという考え方になります。
理学療法士としての掛け持ち
本業とは別の職場で、非常勤として働く方法です。
掛け持ちの例
- クリニック勤務+休日に週1回の訪問リハビリ
- 回復期病棟勤務+月3回のデイサービス
同じリハビリ業務なので、準備なしで始められるのが利点です。弱点は体力面で、実質的に週6日勤務になることもあります。
本業とデイサービスと訪問の3つを掛け持ちしていた時期があります。収入は確実に増えましたが、体力的にはかなりきつかったです。
リハビリ以外の副業
資格に頼らない収入源をつくる方法です。
リハ職が始めやすい副業
- ブログ・アフィリエイト
- Webライター
- 動画編集・デザイン
- SNS運用の代行
- セミナー講師・オンライン指導
収入になるまで時間はかかりますが、本業の昇給に左右されない収入ができると、気持ちの余裕がまったく違います。
身につけたスキルが本業で役立つこともあります。資料作成や院内広報、研修動画の制作などです。
始める前に、就業規則で副業が認められているかを必ず確認してください。
対策③開業は実績を作ってから
理学療法士も開業はできます。ただし条件があります。
理学療法士に開業権はなく、医師の指示のもとでしかリハビリテーションを提供できません。そのため「PTとして開業する」のではなく、「PTの知見を生かして開業する」形になります。
理学療法士の開業例
- デイサービスの経営
- 訪問看護ステーションの経営
- 自費のコンディショニングサロン
- セミナー・講師業
成功すれば収入の上限はなくなります。ただし実績と信用、経営の知識、開業資金が必要で、失敗したときの損失も大きいです。
いきなり挑戦するより、副業で実績を作ってから移行するほうが現実的です。
よくある質問
公的データから計算すると、年平均で約3,270円です(20〜24歳から50〜54歳までの30年で9万8,200円)。全産業の平均は年約4,930円なので、3分の2ほどのペースになります。職場によって差が大きく、私の場合は老健7年で合計14,000円でした。
いいえ。報酬本体はプラス改定が続いています。令和8年度の診療報酬改定は本体+3.09%で、うち賃上げ分が+1.70%、年3.2%のベースアップを支援する措置が含まれています。問題は報酬が下がることではなく、上がった分が給与に回るかが勤務先の判断に委ねられている点です。
資格を取っても診療報酬は変わらないため、制度として給与が上がる仕組みはありません。ただし資格手当を独自に設けている職場はあります。昇給につなげたいなら、取得前に勤務先の規程を確認してください。
データ上は45歳前後で止まります。45〜49歳から50〜54歳の5年間で増えるのは約1,500円で、ほぼ横ばいです。役職につかない限り、ここから大きく変わることはありません。
職場と領域によります。私は老健から訪問リハビリへ移って年収が450万円から500万円になりました。同じ理学療法士でも、施設の種類や法人の方針で年収は変わります。複数の求人を比べてから判断してください。
事業所の裁量です。介護職員等処遇改善加算は介護職員への配分が基本とされており、リハビリ職へ配分するかは勤務先の判断になります。配分方針は面接で確認できます。
まとめ
✓ 昇給は年平均約3,270円。30年で月10万円ほど
✓ 20代前半は全産業より高いが、20代後半で逆転し差が開く
✓ 45歳を過ぎるとほぼ止まる
✓ 報酬は下がっていない。令和8年度は本体+3.09%で賃上げ分も含まれる
✓ 上がった分が給与に回るかは勤務先の判断。まず配分方針を確認する
✓ 変えるなら転職・副業・開業。もっとも早いのは転職
国は賃上げの原資を用意しています。それが自分の給与に届いていないなら、理由は制度ではなく勤務先にあります。
私は3年目に「このままでは上がらない」と気づきました。それでも動いたのは7年目です。早く気づいて早く動くほど、差は小さくて済みます。
まずは自分の条件が相場と比べてどうなのか、確認するところから始めてください。
参考文献・出典一覧
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(年齢階級別の所定内給与額)
- 厚生労働省「診療報酬改定について」(令和7年12月24日 予算大臣折衝)(令和8年度の改定率と内訳)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
- 厚生労働省「介護職員の処遇改善」(処遇改善加算の配分ルール)
- 第253回 社会保障審議会介護給付費分科会 資料1(訪問リハビリの処遇改善加算)
- 厚生労働省「第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について」
- 日本理学療法士協会「統計情報」(有資格者数)
※診療報酬・介護報酬は改定のたびに変わります。本記事は2026年10月時点の情報です。
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